「悪女の深情け」、それは性悪女ではない、醜女のこと
昨日、ちょっとした用があって電車に乗ったときの話である。
電車の席が空いていたので座った。左隣には年の頃30代後半から40代前半くらいの男性 A と B が二人、なにやら女の話をしている様子だった。ここでは、話題の女の名前は 「××子」 にしておく。
A 「××子はいい女だったよね。スタイルいいし、顔も可愛い。あそこはよく行くの?」
B 「う~ん、まあね。でもね、××子は悪い女なんだよ。」
Aは納得していない様子。
A 「ちょっと軽い感じはするけど、頭の回転はよさげだし、愛嬌あって可愛くない?」
B 「う~ん、見た目はいいんだけどね、だいぶ巻き上げてるらしい・・・」
A 「巻き上げてる?金?誰から?」
B 「う~ん、それはちょっと・・・」
A 「Bが巻き上げられってんの?」
B 「イヤー、そうじゃなくて、〇〇が・・」
A 「えっ、〇〇が入れあげてる?」
B 「イヤー、っていうか、・・・、××子も情の深いところはあるんだけど・・・、まあ、悪女の深情けってやつよね、・・・」
聞きたく聞いていたわけでもないが、あまりの間抜けな会話に笑いそうになる。こらえるのが大変。特に「悪女の深情けってやつよね」 は爆笑ものだった。笑わなかったけれど。
「××子はスタイルがよくて顔が可愛い」 のに、何で 「悪女の深情けってやつよね」 なんだろう?
「悪女の深情け」 の 「悪女」 は、スタイルのいいボディコンで男をだます「性悪女」の意味ではない。この場合、「悪女」 は 「性格」 が悪いのではなく、「顔」 が悪いのだ。「美人」 ではなく、俗にいう 「ブス」 を意味する言葉である。
大槻文彦が編纂(へんさん)した有名な辞書 「言海」 で、「あくぢよ」 つまり「悪女、あくじょ」 を引いてみると、
のように書いてある。
ここの(一)ではなく(二)が、「悪女の深情け」の 「悪女」 の意味だ。
つまり、「毒婦の深情け」 なのではなく、「醜婦の深情け」 という意味だ。
だから電車のお兄様方の会話はとんちんかんで理解不能なのだが、なぜか会話が成立しているところが怖い。
いよいよ、「サングラスの色っぽい美人が深情け」 になる時代が日本に到来したようだ。